岡山大学山岳会・岡山大学山岳部

ネパール西部・ダウラギリ地域の学校と村落支援・交流活動

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剣岳撮影山行記録(藤田信)

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8月の裏剣撮影山行が雨で芳しくなかったので、天候を見定めて再度剣に入りました。

剣々と拘るのは50余年前の思い入れがあるからです。3年生夏の固定合宿の時、剣沢を降って二股を経て三ノ窓雪渓(今は三ノ窓氷河と呼ぶそうです)を詰めて三ノ窓に到った事がありました。何方と一緒だったか、三ノ窓で何をしたのか覚えていません。もともと早月尾根2,600mのACが受け持ちだった私が、なぜわざわざ剣沢から登ったのかも思い出せませんが、この時に見上げた“これぞ雪と岩の殿堂だ。”と衝撃的に脳裏に焼きついた景観が忘れられないのです。どの谷を見上げたのかも判らなくなっていたのですが、今思えば三ノ窓雪渓とチンネ・八ツ峰とが織り成す造形美が焼きついたのです。

平成23年6月、青野君と残雪豊かな剣を眺めながら奥大日を往復し、また平成25年9月のOB合宿で秋を迎えようとしている剣を眺めしている時、ふっとこの光景を思い出しました。思い出す光景は、それが小窓や三ノ窓雪渓なのか長次郎や平蔵雪渓なのか全く判りません。或いはハシゴ谷乗越辺りから眺めたのだったかも知れないと、半世紀以上前の記憶は薄れてしまっていました。それが今年8月の裏剣撮影山行の時に少しは見当がついたのです。仙人新道1,700m付近から見る三ノ窓氷河の光景が“これぞ雪と岩の殿堂”に少し似通っている様に見えたのです。「どうも三ノ窓氷河だったのではないか?ただ半世紀前には仙人新道は無かったから、剣沢北股の下部からの眺めだったのだろう。」と胸を躍らせて二股に降りたのですが、雨とガスで撮影どころではなく仙人池ヒュッテに引き返しました。

50余年前に感動した光景をやっと見つけたはずなのに写せない悔しさ、是非にももう一度と今回の撮影山行になりました。


平成27年9月28日(月) 曇りのち晴れ 月齢14.8
4:50自宅出発、東京駅経由北陸新幹線8:30富山駅着、富山地鉄・ケーブル・バスを乗り継いで、11:05室堂ターミナル(2,433m)着。12:00雷鳥坂登口(2,260m)→14:00~14:30剣御前小舎(2,760m)→15:10剣沢小屋(2,530m)、19:00就寝。
 
北陸新幹線とジパング倶楽部を使うと、信濃大町→黒四ダム→室堂より往復で\4,000.-安くて1時間早く着ける、便利になった。

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写真1 “風収まらず、剣の朝” 剣沢小屋近くで
 
剣御前小舎で坂本君に会う、変わらず元気だ。真砂沢ロッジが満員で断られた事を彼に話すと、「真砂沢ロッジは小さいから満員の時は無理に泊まる事は出来ない。仙人池ヒュッテまで行く外ない。真砂からヒュッテまで藤田さんの足で5~6時間は掛かるから、今日はこの小舎には泊まらず剣沢小屋まで行った方がよい。」と予約も取ってくれた。彼と呑むのを楽しみにしていたが、明日がきついのはより敵わぬと剣沢小屋まで降る。小屋の近くの池に映る剣を撮るが、今年入選した写真“一瞬の静穏”のような無風ではなく、剣も焼けない。小屋はほぼ満員。

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写真2 雷鳥沢と剣岳(左) ミクリガ池付近で

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写真3 奥大日岳 雷鳥坂2,500m付近から


9月29日(火) 快晴のち晴
4:50起床、朝食後撮影。6:15出発→7:00剣沢2,235mでアイゼンを着ける→7:30平蔵谷出会(2,065m)→8:00一ノ沢出会(1,855m)アイゼンはずす→8:30~9:00真砂沢ロッジ(1,749m)第一昼食→10:30二股(1,580m)→10:40~12:15北股1,610m付近で撮影と第二昼食→12:50~14:25仙人新道1,730m付近で撮影→16:00仙人池ヒュッテ(1,840m)、19時就寝。
 
朝も撮影するが、剣は赤くはならなかった。
剣沢は平蔵谷出会のずっと上まで雪があり、安定している感じ。雪は一昨年のOB合宿の時よりずっと上まで沢山残っている。
真砂沢ロッジは今年の大雪でかなり傾いており、主人・佐伯成司氏の話では建替えは1億円を超えるそうだ。84歳の親の介護もあって、9月30日限りで営業はもう止めると言う。

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写真4 平蔵谷 剣沢との出会から

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写真5 長次郎谷 出会から高度約100m上で

二股の橋をわたり、仙人新道登り口から見上げる三ノ窓氷河は思い描いていたスイスアルプス的な“雪と岩の殿堂”らしい、矢張りここだ!だが学生時代に眺めた光景はもっと岩が多かった様に思う。もう少し上から眺めたのだろう。廃道に近い北股・池ノ平へのルートを登りながら見上げると、やはりそうだ、雪と岩とに思い出の光景には無かった紅葉が加わってまるで“宮殿”とも見える光景!半世紀振りに眺めるこの景観(写真10)、幻ではなかった。抱いていたより輝いている。暫くは見とれていたが、三脚を立ててじっくり撮影を始める。フィルターを換え絞り値を変え、焦点距離を替え構図を変えてとり続ける。なかなか想い抱いていたような構図にならない。三ノ窓氷河に八ツ峰の影がもう少し落ちてくれると絶好なのだが、ガスが出てきて諦める。仙人新道の途中でも写すが先程の比ではない、この新道の登りは標高差600m弱、急登できつい。

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写真6 真砂沢 出会から

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写真7 三ノ窓氷河 二股の橋から

仙人池の畔で空が焼けるのを期待して待ったがだめだ。仙人池ヒュッテも込んでいる、皆さん紅葉を愛でに登ってきているのだ。“池ノ平の紅葉はここよりずっと綺麗だからもう一日泊まって観て行きなさい”と勧められ、少し迷ったが予定通り一泊とした、これは結果として良かった。

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写真8 小窓ノ雪渓 仙人新道1,700m付近から

この小屋で剣御前小舎の坂本君の評判は良い、“あの大きな優しい人でしょう。あの人がいるから(剣沢小屋まで)降らずに御前小舎で泊まるの。”と客の皆さんが云っている。責任者の好評は小屋の営業にとても大切なのだなと知る。

北陸の人達は朝一番(5時)の立山ケーブルで上がり、剣沢を降って一気に仙人池ヒュッテや池ノ平小屋まで来て紅葉を愛で、翌日は来た道を引き返して帰路に着くと言う。60歳半ばのご夫婦がそう云ったので驚いたが、当り前らしい。それに夏場に剣に登る時はカニノヨコバイやタテバイが混むのを避けるため早月尾根を行くと云う、それも尾根の昼の暑さを避け、夜中0時頃馬場島を出て午前10時頃には降りているそうだ。剣が如何に身近にあるかが良く判る。


9月30日(水) 快晴 月齢16.8
4:30起床、5:15~7:00池の辺りで撮影、4℃7:15仙人峠→9:55二股の橋→11:30~12:00真砂沢ロッジ・昼食→12:30剣沢1,820m付近でアイゼン着ける→13:00~14:00長次郎谷を少し登って見るが良い構図はない→14:10平蔵谷出会→15:002,210m付近でアイゼン脱ぐ→16:10剣沢小屋16:30~17:30傍の池に映る剣を撮る。19時就寝。

朝の仙人池では裏剣が赤く染まってくれる、それが鏡の様な池に映って結構な被写体だが雪を被っていないので今一だ(写真9)。
ここは名だたる撮影ポイントで、紅葉に初雪を冠った裏剣、しかもそれらが朝日に朱に染められて無風の鏡の様な池面に投影される。これで初めて良い山岳写真と認められる程撮り尽くされている。雪が来たら其の日で紅葉は落ちてしまうから、こんな条件は10年に1度あるかどうかだそうだ。

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写真9 “裏剣、静穏” 仙人池に映る裏剣と紅葉、これで雪を冠っていると最高だが・・・。

帰りの剣沢は標高差900m距離6km弱、緩やかな登りだが結構きつい。出来れば坂本君の小舎まで行きたかったが、長次郎谷を登って見たりして遅くなり矢張り剣沢小屋に泊まる。


10月1日(木) 晴のち風雨
4:30起床5:10~7:00剣沢小屋傍の池で撮影7:30出発→8:45~9:15剣御前小舎早い弁当、風強い→10:30雷鳥沢の橋→10:50頃から風雨強し→11:45室堂ターミナル12:00高原バス発車→JR富山で新幹線1時間待ち→19:30自宅着。

今日は下山するだけだと池の辺でゆっくり撮影する、この時はほぼ無風だったが冠雪は無い。朝日が顔を出しかけると風も出始める、日が昇り切ると風は収まって来る。真剣に写真に取り組むまではこんな微妙な現象には気付かなかった。雪が無く、風があってあまり良い写真(写真1)にはならないが、当初の目的・“雪と岩の宮殿”が撮れたのだから贅沢は言わない事にする。

小屋を出て暫くすると急に風が強くなる。剣御前小舎少し手前で西からの強風に煽られて転んだ。坂本君から「新室堂乗越へは廻らず雷鳥坂を降りた方が少しは風を避けられる。」とのアドバイスを得て、写真としては魅力の少ない雷鳥坂を降る。室堂平は風雨が荒れ狂っている、これほど早く強く崩れてくるとは予想できなかった。仙人池ヒュッテでもう一泊していたら、今頃は剣沢雪渓の登りで激しい向い風に苦労する所だった。この風雨で紅葉は全て散ってしまっただろう、爆弾低気圧の影響だと言う。6月の奥穂・白出のコルでの吹出しもきつかったが、今日も激しい。ただあの時は+1℃だったが今日は+14℃、まあ良し。

半世紀余抱いていた“雪と岩の宮殿”が撮れた。満ち足りた気分で帰路に着く。


撮影山行への私の思い入れ

山頂を目指す普通の山行をされる方には、このような撮影山行は奇異に思えるかも知れない。

目の前に堂々たる剣を仰ぎながら、それに登る事をしないで周辺を歩き廻っている。“血が騒がないのか?”と思う方も多いだろう。だが剣を撮るのに剣に登ったのでは剣が見えないのだ。それと撮影に徹しないとこれはと言う写真は偶然には取れない事が今頃判って来た。私も“純粋な撮影山行”は今年8月の裏剣と今回とで2回目だ。

平成25年5月の徳本峠・霞沢岳では写真も撮ったが、霞沢岳に登ると云う目的も持っていた。この時の写真の内2点が入選出来た。
入選した事で山岳写真に欲が出てきた、それまでは周りの人に見て貰うだけで満足していたのだが、「よし!また入選するようなのを撮るぞ。」の思いが強くなり、同年9月の剣OB合宿も私だけは撮影山行の様な行動を取らせてもらった。その甲斐あってこの時の一点も“2015全日本山岳写真展”に入選した。これで益々撮影山行に熱が入り、2回も続けて剣へ入る事となった。

それと焦りもある。「75歳になった、山へ入れるのもせいぜい後1~2年だろう。其の間にこれはと云える作品を残したい。」の想いはどんどん強くなってくる。写真の中に私の“山への強い想い、厳しい山への憧れ”を表したいのだ。私を鍛えてくれ、我が生きる力をくれる山を・・・。もう少し若い時から始めておけば良かったと省みるが、10年前は写真より登る事の方に気が往っていた。しかし最近は、アイゼンを着けピッケルを握って雪中に立つ時の昂揚感、「ここからは己の精神と肉体だけが頼りだ。」はぼつぼつ無理になってきた様だ。それを“せめて山岳写真に表したい”の一心で撮影山行を続けている。

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写真10 “まさに雪と岩の宮殿” 三ノ窓氷河とチンネ・八ツ峰 剣沢北股下部から望む

[ 2016/04/25 14:50 ] 山岳会員の山行報告 | TB(-) | CM(-)
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