岡山大学山岳会・岡山大学山岳部

ネパール西部・ダウラギリ地域の学校と村落支援・交流活動

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『羊蹄山中高年ツアー登山の遭難事故分析』(山崎)

1999年の羊蹄山遭難事故

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【遭難の概要】
北海道倶知安町の羊蹄山(1898メートル)(*1)に入山していた登山ツアーの14人のうち男女3人が行方不明になり、9月26日午前10時35分ごろ、捜していたツアーの男性添乗員(49)が3人を見つけた。
死亡した女性2人は京都府八幡市、無職、Hさん(64)と京都市下京区、同、Sさん(59)。一緒にいた大阪府堺市、同、Tさん(67)は26日午後4時過ぎ、消防署員らに付き添われ、自力で下山した。Tさんはやや衰弱しており、倶知安町内の病院に入院した。

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【ツアーの概要】
ツアーは大阪市中央区の旅行会社が企画した「秋の北海道100名山中級コースえぞ富士羊蹄山とニセコアンヌプリ」。40~71歳の客14人と添乗員1人の計15人(*2)で22日に大阪市を出発した。
25日午前7時半ごろ、倶知安町側から羊蹄山に入山し、午後4時半に下山予定だったが、3人が戻らないため、同夜、同社から倶知安署に届け出た。

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【事情聴取内容】

=天候=
【1】25日朝は北海道を直撃した台風18号の通過直後で、地元の登山愛好家からは「山の気象を甘くみた無理な登山だったのでは」との声が出ている。
【2】25日朝は倶知安町内は強風が吹いていた。同社によると、添乗員から25日午前7時45分ごろ、「天候が回復してきたので登れる」と連絡(*3)があったという。
【3】Tさんによると、25日午後2時ごろ、山頂から下山途中に岩場で休んでいる女性2人を見かけた(*4)。Hさんとみられる女性が体調が悪そうで、もう1人が付き添っていた。避難小屋が見つからず(*5)、3人で夜を明かしたが、冷え込みが厳しく、雨にも見舞われ、女性2人は体力を消耗して次々に亡くなったという。
【4】25日夜の山頂付近では雨まじりの突風が吹き荒れ、気温も氷点下近くまで下がったとみられる。

=状況=
【5】2人が見つかったのは山頂の京極口三角点から約200メートル比羅夫寄りで、登山道からは見えない場所(*5)。
【6】近くの避難小屋までは歩いて約30分の距離(*6)だった。
【7】2人は約1メートル離れ、高さ約2メートル、幅約4メートルの岩のくぼみ(*7)で岩に寄りかかるようにして亡くなっていた。
【8】ともに上下ジャージーの上に、フード付きウインドブレーカーの軽装だった。体はぬれていた(*8)が、外傷はなく、死因を調べている(北大で司法解剖したそうですが、おそらく低体温症から疲労凍死に至ったのだと思います)。
【9】倶知安署は27日、ツアーを企画した旅行会社の添乗員(49)(*9)ら関係者から事情聴取した。添乗員は「登山口が雨もなく風も強くなかったことや参加者の意欲が強かったことから、問題ないと判断(*10)して登山に踏み切った」と述べたいう。

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【検証】後知恵になることを承知で…

*1 秋の北海道の2000メートル級の山というのは、本州の3000メートル級の山とほぼ同程度の気象条件を有していると考えるのが妥当です。

*2 なぜ山岳ガイドは同行しなかったのでしょうか。この旅行会社も、企画段階ではプロの山岳ガイドの参加を検討したに違いありません。当時、ニセコを知り尽くしたほどの添乗員が存在していて、プロガイドは不要となったのか、あるいは、旅行会社も競争の激しい京阪神のことですし(価格競争に勝つ為に山岳ガイド経費を節約する為)、お客さんも”山馴れ”した人が多いでしょうから(旅行会社も”客馴れ”してしまった結果)、安易な企画・運営に陥ったのではないでしょうか。

*3 この添乗員に、判断能力があったのでしょうか。能力があったのに判断を間違えたならば、この添乗員の過失致死。添乗員に能力がなかったのならば、旅行会社に違法性があったことになります。裁判になれば、刑事上はこのあたりが争点ですが、旅行会社が経済活動としてツアーを実施する以上、会社の利益にならないことは出来ません。会社利益(商業利益)と顧客利益(面白さと安全)のバランスが難しいところです。

*4 死亡した2名を発見した男性は、この2名と同様、パーティーから外れていたと考えられます。こういう場合(天候が悪い、特に濃霧の状態)、絶対にお客さんを見失ってはいけません。

*5 *6 ともに、完全に道に迷っていたのだと思います。(⇒事前説明と登山中の人数確認が行われなかった。)

*7 *8 ビバーク用のテントを持っていなかったようですが、これくらいの山で、軽装での悪天候下のビバークは無理です。カッパとセーターと非常食(板チョコ1枚)があれば凍死はしていないし、男性1名は動けたのですから、捜索隊と連絡を取れたと思います。3日間行方不明などというのに比較すれば、発見は早いほうなのです。今回は、女性2名があまりに早く死亡してしまった原因が、個人装備の不備・旅行会社からの指導不足にあったのではないでしょうか。

*9 この添乗員に登山経験があったか不明です。いずれにしても、登山のプロとしての経験を基礎に顧客を納得させるだけの説得力がなかったのでしょう。

*10 これが一番の問題。商業ガイド登山では、顧客利益を確保した上で、それをまた会社利益とバランスさせることになります。この複雑な関係中で、旅行会社が悪天候を理由に、顧客側の『登山を楽しむ』という利益を、安全の為に取り上げることは非常に(特に現場にあっては)難しいことです。あまりはっきりした天候でないときはなおさらです。旅行会社と客の契約関係の外にあって、適正に判断できる第3者的な立場が必要で、それが山岳ガイドなのではないでしょうか。

【その後の経過】

ツアー登山遭難死、添乗員に有罪判決札幌地裁
(2004年3月17日・http://www.asahi.com)

北海道の南西部にある羊蹄山(1898メートル)の山頂付近で99年9月下旬、K社(大阪市)が企画した14人のツアー登山に参加した京都府の女性2人が道に迷って凍死した遭難事故で、安全確保を怠ったとして業務上過失致死罪に問われた同社添乗員のA被告(54)に対し、札幌地裁は17日、禁固2年執行猶予3年(求刑禁固3年)の有罪判決を言い渡した。

裁判長は「被害者は適切な引率を受けられず凍死した。軽率な過失で、遺族は厳罰を望んでいるが、被告1人で引率した背景に利益優先の企業体質があり、被告のみに責任を帰するのは酷にすぎる」と述べた。

旅行会社による登山ツアーの遭難事故で添乗員の刑事責任が認定されたのは初めて。A被告は起訴事実を否認しており、即日控訴した。

判決によると、A被告はツアー登山を企画して販売、添乗した。降雪期直前で、山頂付近は迷いやすい地形のうえ、濃霧で道に迷う可能性があった。A被告は1人で14人を引率して99年9月25日朝に登山口を出発。同日午前11時半すぎごろから26日未明までの間、京都府八幡市のHさん(当時64)と京都市下京区のSさん(同59)を山頂付近で迷わせ、凍死させた。

判決は「契約上、添乗員は天候などを考慮してツアーを中止する権限がある。危険防止の義務があった」と指摘。そのうえで「当時の天候状況から迷走して凍死も予見できたのに、被告は2人が集団から遅れたのに合流するのを待たずに登山を続けた。注意義務に反した」と判断した。

弁護側は最終弁論で、「力量の異なるほとんど初対面の10人以上のメンバーを統率するのは不可能。被告が指揮をして全員を一致団結して下山させることは、要求もされていなかった」と無罪を主張した。

凍死した2人の遺族はK社とA被告を相手に、総額約1億2千万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしている。

山での遭難事故をめぐっては、北海道のニセコ山系で98年1月に雪上ハイキング中に客を雪崩に遭わせたとして、山岳ガイドが業務上過失致死傷罪に問われ、有罪判決が確定している。
[ 2009/02/04 00:52 ] その他もろもろ | TB(-) | CM(0)
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